地域まるっと体感宿 玉村屋は、様々な人の得意なことが集まることで、「泊まれる寺子屋」として、知恵が集まる場所を作っていきたいと考えています。そのため、いつものスタッフがお迎えするだけでなく、期間限定で異なる宿主が得意なことを生かして玉村屋を盛り上げていくと面白そうと考え、「〇〇×玉村屋」ということで期間限定で宿主を迎えていきたいと思います。
2022年3月からは、静岡出身の池谷謙吾さんからバトンを引き継ぎ、大阪出身の古田崚さんに宿主をおまかせすることになりましたので、少しでも知ってもらえるようインタビューしてみました。
*期間限定の宿主がメインで玉村屋の運営もしますが、必要に応じて我々もおりますので、ご安心ください。
地域まるっと体感宿 玉村屋
野村直樹、中谷翔
今回は期間限定の宿主として宜しくお願いします。まずは、簡単に自己紹介をお願いします。
大阪府出身29歳の古田崚(ふるた りょう)です。大学進学で大阪を飛び出して、高知県で建築系デザインを勉強しました。卒業後は東京の建設コンサルタントの会社に就職。5年半ほど働いた頃に、ふと今後の生き方を考えるようになった結果、大阪北部の里山にあるシェアハウスに移住して、地元の家具屋さんでアルバイトをしつつ、自分自身の仕事を作れないかを挑戦していました。
最近は、一旦実家に戻り、より自分にあった理想の暮らしを模索していたところ、月替り宿主にお誘いいただき、3月から3ヶ月間、玉村屋のお手伝いをすることにしました。
今までの人生を聞いていると、自分のやりたいことに向かっていく様子が感じられたのですが、そもそも建築の世界に入るようになったのはどういった経緯なのですか。
大学進学を考えたときに、それまでから興味のある自動車を勉強がしていこうって考えました。そこで国公立でそういった勉強ができるというところで、高知県の大学に進んだんですね。けど、その大学では一番興味があった、自動車のデザインを学ぶことができなくって。そこで、デザインつながりで、建築デザインを学ぶことにしました。そこからの流れで、卒業後に建築コンサルタントのお仕事をしていました。
学生時代に自動車の勉強はあまりできなかったのですが、自動車工場に「アルバイト代をいらないから、勉強させてほしい。」とお願いして授業外の時間で通うように。そこで、車の仕組みとがわかるようになり、日常の点検や故障の原因について知ることができました。ボルトを締めたり緩めたりなど、ものづくりの基本を学ぶ事が出来たのも大きかったです。
その自動車工場での経験を生かして、自動車関係の仕事に就く道もあったと思うのですが、なぜ建築を選んだのですか。
就職活動をしていたときに、ありがたいことに建設コンサルタント会社と機械部品の商社から内定が出たんですよね。働き方や仕事の幅を考えて、自分の肌に合う会社を選ぼうと考えた結果、建設コンサルタント会社を選びました。
実際に働いてみて、最初の1,2年は会社に馴染めなくてしんどい思いをした時期もありましたが、大きい会社だったから、部署異動があり、その異動先が自分の肌にあった。そして、仕事もぼちぼちできるようになりました。
このあたりで、崚くんと玉村屋の出会いがあるんですよね。
いくつかのプロジェクトも任されるようになり、仕事も順調だったのですが、新型コロナウイルス感染症の影響で3月末から完全テレワークになりました。コロナの影響で関わっていたプロジェクトが全部なくなり、部署異動。それが自分でやりたいと思った仕事ではなかった。このままサラリーマン続けていても、人生のどこかで躓いてしまいそうって思ったから、いろいろ調べてみて、玉村屋のオンライン宿泊に参加してみました。
実は「移住」というキーワードはコロナが始まる1ヶ月位前から「田舎に住んでみるのもありかな」と考えるようになったときに知っていたんですよね。ぼんやりとは考えていたけど、仕事とか家とかの心配があったから、時がきたら動くのかなと思っていました。それが、コロナになって時間ができて調べるようになったら、意外と飛び込めるかもしれないなと。
実際にオンライン宿泊に参加すれば、地方で暮らしている人の生の声が聞けると思いました。そのときに聞いた、移住者の方の話が印象的でしたね。その方は「インターネット界隈を見ていると移住のきらきらライフを書いている人が多いけど、実際はそうじゃない人もいて、田舎でも頑張りすぎず、等身大の自分で楽しくやっている人もいる」とおっしゃっていました。田舎で成功したいっていうモチベーションだけじゃなくて、普通で楽しくやっていくってのも良いかもと感じ印象に残っています。まっ、当時はバリバリ田舎でやってやるって思っていましたが、1年間実践した今、この言葉の重みを感じました。
そこから実際に移住に向けて動き出すわけなのですが、どのタイミングで決意しましたか。
住んでみたいと思った町の役場に連絡をしたら、地元で移住促進をされている方とつないでもらうことができました。ただ、その方からは、仕事も家も見つけられるかもしれないという曖昧な感じ。だったら、実際に見てみようということで、行動に移しました。
同じ大阪府なので実家近いとはいえ、どんな雰囲気かを滞在して感じたいと思い、地域周辺で泊まれる場所を探していたら、シェアハウスとの出会いがあったのです。実際に滞在してみて、ここに住むのもありだなと考えるようになりました。ちょうど、このシェアハウスオーナーがシェアしていた求人情報に家具屋さんのお仕事があり、働くことになりました。実際、6月くらいに初めて移住担当の人に会ってから、2ヶ月くらいで移住することが決まりました。
最初に動き出してから2ヶ月で移住が決まるのは、すごい行動力ですよね。実際に大阪に移住してみてどうでしたか。
実際に移住してみると、大阪の田舎町はすでにプレイヤーで飽和していると悟りました。確たるものがない自分には、生業をやっていくのが難しい場所でした。既に自分でなにかをやっている人は大阪市内とかでバリバリやってきた人が、縁があって移ってきた感じ。僕はサラリーマンをやめて、こっちに来たので、体力はあるけどスキルやウリがないから、なにかをやっていくのは難しいなと。
今回、福井に移住して、玉村屋に住み込もうと思うようになったのはなぜですか。
大阪住んでいる時も何度か南越前町に遊びに来る中で、ここなら、なにかをやりたいと思えば、スキルがなくてもその気持ちを応援してくれる場所なんだと感じました。やる気はあるけど、なにもなく。そんな僕でも、福井にいくとその可能性が広がるんじゃないかと。
今回、玉村屋の月替り宿主にお誘いいただいたときに、自分にできるのかどうかとは心配になりました。男だし、むさ苦しいし(笑)ただ、声をかけてくれているということはそのあたりも含めてのお誘いだろうから、やれるだろうと思ったんですよね。ただ、ゲストは宿泊料を払ってきてくれてるから、満足して帰ってもらわないといけないという緊張感はありました。ただ、大阪のシェアハウスに住んでいるときに、ゲストが泊まっていることが何度もあって。そこでは、普通に話をするだけで、喜んでくれた経験をしていました。だから、玉村屋でもそういう感じでいけば、大丈夫かと思った。決めたときに、最初は不安だったけど、過去の経験から大丈夫だと考え直し、ワクワクしています。
まさに玉村屋は地域の日常やスタッフの日常をゲストにも触れてもらうということで、崚くんが考えてくれたイメージで間違いないかなと思います。いらっしゃったゲストとどんなふうに時間を過ごしたいですか。
とにかく、ゲストのお話を聞きたいですね。町外から来る方が多いと思うので、ゲスト町内のいろんなところを見て、どんなふうに感じたかを聞きたいです。僕もその人の感じたことを聞いて理解して、共感したいし、自分の知らなかったことを広げていきたいと思っています。その人ならではの感じ方を聞くことで、その人の気持ちが整理されてよりよい旅になるのをお手伝いできるんじゃないかなと。
玉村屋のお手伝い以外では、どんなことをしていきたいですか。
地域の製材所などでのお手伝いを通じて、地域のものづくりがどのようになっているのかを、技術や全体的なことを勉強させてもらって、自分の今後の生業に生かしていきたいです。
福井は、純粋に飯がうまい。だから、美味しいごはんを食べて、温泉に浸かって過ごします。これまでに何度か玉村屋に訪れる中で、福井の生活が楽しいとわかっているから、そこを改めてしっかり味わっていきたいですね。
時間的にも余裕があると思うので、余白の中で現れてくるアイデアとか、やりたいことを形にしていきたいたいとも思います。
ご縁があり、近隣の空き家を使えるようになったら、そこで、制作活動とかをやっていきたいと考えています。最近は、革を使って時計ベルトを作っていますが、他にもモノの修理も手掛けるようになりました。例えば、破れたズボンの修理とか。そのようにして暮らしの道具を直すことも生業にできればいいなと考えています。
崚くんのその話を聞いて、地域に住んでいるおじいちゃんで気に入ってくれそうな人が思い浮かびました。
こういう話が福井に出てくるのが、玉村屋に関わることのいいところ。そういう人に出会えるのもすごく楽しみにしています。
まずは3ヶ月。玉村屋を手伝っていただくわけですが、その後はどんなイメージですか。
その後も少しは考えていまずが、今のところぜんぜんわかりません。けど、なんとなく3ヶ月終わった後は、玉村屋からは卒業するけど、同じ地域にはいそうですね。別のところで住みながら、こういうことをやりたいと言うのが明確になって進んでいるような気がします。だから、この3ヶ月でそういうのが明確になっていたらいいなと考えていますね。
将来的な野望としては、山1個まるまるものづくり計画。ひとつの山から取れるものを、麓で加工し、販売していく。使っていきたい資源は木材や石、土、獣など。例えば、イタリアだとそういう感じのところがあるって聞きました。地域がまるごと一つの企業の工場みたいになっていて、街が出来上がっている。そういうのが出来たらおもしろいなって考えています。
という想いをもとに玉村屋にやってくる崚くん。物腰柔らかく、なにかを話したときに「いいっすね~」と返してくれる崚くんに会いに、玉村屋に遊びに来てください!ひとまずは2022年5月までの予定です。