★参加者インタビュー★
参加者募集中の「発酵を見極める杜氏の仕事を体験」を昨年度も開催しましたが、
約20名の方が、首都圏や関西、福井県内から参加してくださいました。
その中の一人に町内からの参加者がいました。大阪から移住してきた野村直樹さんです。
普段は福井県南越前町で切り花農家として奮闘中ですが、
冬は雪が多く降るため、畑仕事をすることができません。
そんな彼が2か月かけて杜氏体験に参加してくれましたので、その感想を聞いてみました。
今回は2ヵ月もの間、参加していただきありがとうございます。
なぜ、参加しようと思ったのですか?
私は切り花農家として、春から秋にかけて畑仕事に励んでいますが、
雪が深く積もる冬の時期にはできることが無くなってしまいます。
今回のような企画があり、酒蔵さんが働き手を探していると聞き、
普通ではできない経験だろうと期待して参加しました。
そうですよね。結構、他の参加者の方からも、普通ではできない体験ができそうと言う期待が多かったですね。
参加してみて、学んだことはどんなことがありますか?
聞くところによると、お酒の仕込みに冬の寒さを利用すること、
その冬の時期にちょうど手が空く農家や漁師が、杜氏として出稼ぎに来ること。
今でこそ少なくなってしまったこのような在り方は、
北陸の寒さのなか暮らしてきた人々のたくましさ、賢さを感じさせます。
そして、自分自身が自然な流れでこのような働き方をなぞっていることに気づき、深い感慨を覚えました。
そういう意味では今回の野村さんが参加されたことは、昔からの自然とともに生きる生き方というのが再現された感じですよね。
そうですね。先ほど、「お酒の仕込みに冬の寒さを利用する」と言いましたが、
言葉で理解するだけでは物足りないということ、ひどく痛感させられました。
そのことが何よりも、2か月の酒蔵仕事で肌が覚えている印象だったと思います。
聞くだけではわからなかったことが、やってみてわかったということですよね。どんな場面で感じましたか?
酒蔵では多くの場面で水を使います。やがてお酒の一部になる仕込み水はもちろんのこと、お米を洗い吸水させるとき、使い終わった道具を洗うとき、作業の前に手を洗うとき。近くの山から引いてきた澄み切った水の冷たさは、酒には良いのでしょうが私には凶器のように感じました。平気な顔で手を洗う北村さん(北善商店10代目当主)のことを、むしろこちらが心配してしまうほどだったのですが、数週間と続けているうちにいつの間にか慣れてしまい(外はまだまだ寒いのに・・)、こういうものなのかと納得してしまうのです。
確かに、私自身も初めて仕事を手伝わせていただいた時に、水が冷たいのが印象的です。私はまだ、冷たい水に慣れてませんが(笑)
水温もそうですが、気温の低さも印象的です。蒸したお米は当然アツアツです。麹づくりや仕込みにはアツアツのままでは使いません。窓を開け放ち外気を取り入れれば、薄く広げたお米はあっという間に冷めてくれます。もちろん私の体も冷えます。たくさん着込んで仕事をするので大丈夫なのですが、吹雪の日にはどうしたものかと困り果ててしまいます。また、お米が冷め過ぎても困るので、お米を広げる作業は急いで行わないといけません。それだけではなく、麹を育てる室の中ではむしろ汗をかく程の暑さとなり、2つの空間を行き来するのはなかなか辛いものでした。
Photo.蒸した米を素早く広げて、麹菌に適した温度に調整します。(写真右)
自然の寒さを利用するからこそ人間都合ではなく、ありのままの状況に自分を合わせるというか、自然と共に生きることを実感されたのではないでしょうか。
そうですね。ただ、肌が悲鳴を上げる酒蔵ですが、嗅覚には良い刺激がたくさんありました。仕込みのタンクからの香り、麹の変化していく香り、酒粕に触れて手に染みつく香り、搾り終わった透明なお酒からの香り。お酒が好きでこの蔵に来た人にとっては、もどかしくなってしまうほどに幸せな空間ではないでしょうか。その背後にある小さな生き物たちの営み(麹菌などの成長)についても、北村さんは仕事の合間に教えてくれて、とても勉強になりました。
滅多に入ることができない酒蔵だからこそ、普段とは異なる感覚が研ぎ澄まされて、新鮮な体験がしていただけたようですね。今回は2ヵ月もの間、参加していただき、ありがとうございます。
Photo.瓶詰作業。酒蔵のほとんどの仕事を体験するため、瓶詰や瓶洗いもあります。(写真左)
野村さんは町内に住んでいて、自営で切り花農家をされているからこそ2か月もの間、参加できましたが、杜氏体験は1日からでも大丈夫です。1日に参加できる人数が限られていますので、ご希望の方はお早めにお申し込みください。